1、紛争の内容
①借主Aは、管理会社Bが管理する賃貸マンションの1室を賃借していたが、居室の雨漏りにより被害を被ったのに管理会社Bが弁済に応じないとして賃料の支払いを停止し、督促にも応じなかった。
②本件賃貸借契約書には、「賃借人が賃借料の支払いを7日以上怠ったときは、賃貸人は直ちに賃貸物件の施錠をすることができる。
また、その後7日以上経過した時は、賃貸物件内にある動産を賃借人の費用負担において賃貸人が自由に処分しても、賃借人は異議の申し立てをいないものとする。」との特約条項が存在する。
③管理会社Bは、借主Aが督促に応じないので、その従業員をして居室内に侵入させ、同室内の水道の水を抜き、ガスストーブのスイッチを切り、浴室の証明器具のカバーを外す等した上、居室の錠を取り替えた。
④借主Aは、管理会社Bに対し、不法行為に基づく損害賠償請求をした。
2、各当事者の言い分
借主Aの言い分
①もともと、居室の雨漏りにより被害を被ったのに、Bが被害弁償に応じないから賃料の支払いを停止したのであって、このような結果を招いたのはBの対応に問題がある。
②勝手に管理会社Bの従業員を居室内に侵入させ、同室内の水道の水を抜き、ガスストーブのスイッチを切り、浴室の照明器具のカバーを外す等した上、居室の錠を取り替えた行為により、平穏に生活する権利を違法に侵害されたため、これに対する損害賠償請求をする。
管理会社Bの言い分
賃貸借契約書には、「賃借人が賃借料の支払いを7日以上怠ったときは、賃貸人は直ちに賃貸物件の施錠をすることができる。また、その後7日以上経過した時は、賃貸物件内にある動産を賃借人の費用負担において賃貸人が自由に処分しても、賃借人は異議の申し立てをしないものとする。」 との特約条項があるのだから、これに基づいた行為を行っただけで、契約段階でAとも合意済であり、何ら違法ではない。
3、本事例の問題点
Bの行為、特約条項されてる場合でも違法性が認められるか。
4、本事例の結末
判決は、本件特約の定める手段による権利の実現は、法的手続によったのでは権利の実現が不可能または著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合を除くほか、原則として許されず、そのような特別の事情がない場合に適用される限りにおいて、本件特約は公序良俗に反し無効であるとして、Bの損害賠償責任を認めた。
5、参考
○民法代709条(不法行為による損害賠償)
○民法第715条(使用者等の責任)
○消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)