学生の一人暮らしでも住民票は移すべき?

そもそも住民票とは?

 住民票とは、住民としての居住関係を公に証明するものです。氏名、住所、生年月日、性別、前の住所、届け出日、世帯主の氏名、世帯主との続柄などが記載されています。
 これらの情報が、国民健康保険や国民年金、各種行政サービスのベースとなります。
住民票の内容を用紙に印刷したものは「住民票の写し」と呼ばれます。住民票の写しは住民登録をしている市区町村の役所などで手数料を支払うことで取得できます。マイナンバーカード(個人番号カード)があればコンビニエンスストアで取得できる自治体もあります。

大学生が一人暮らしを始めたら住民票は移すべき?

 では、大学生が一人暮らしを開始する場合に住民票は移すべきなのでしょうか。

基本は14日以内に移す

 転入届は、転入した日から14日以内に提出する必要があります。これは「住民基本台帳法(第四章第二十二条)」に記されている義務であり、基本的には大学生が引越しをする場合でも適用されます。
 転入届を提出することで住民票は引越し先の市区町村に移されます。転入届を出さずにいると、選挙の際に住所地で投票ができなかったり、転入先での行政サービスが受けられない場合もあります。
 なお、転入届を提出する際はマイナンバーカード(個人番号カード)の住所変更も忘れずにおこないましょう。

学生の場合は例外もある

学生の転入届の提出においては例外もあります。例えば以下のような場合は住民票を移さなくても罰則を受けることはありません。

  • 頻繁に実家へ帰る、新住所で生活する期間が1年未満である
  • 進学のため一時的に居住し、卒業後は実家のある場所へ帰る予定がある

このように一定の期間のみ実家以外の場所に住む場合は例外とされ、法律は適用されません。より詳しく確認したい場合は新しい居住地の市区町村の役所に聞いてみましょう。

住民票を移すと親の扶養から外れる?

 扶養とは、所得がない子供や学生、何らかの理由で働くことができない人などが親族から経済的な援助を受けることを指し、税法上の優遇措置が受けられます。住民票を移したことを理由に親の扶養から外れることはありません。
 なお、アルバイトなどでの給与所得が103万円を超えると税法上の「扶養親族」からは外れてしまいますが、勤労学生控除を使えば学生側は所得税、住民税ともに非課税となる可能性もあります。

勤労学生控除について

 勤労学生控除は、学校に通いながら働く学生のための所得控除です。所得控除とは納税者の個人的な事情を考慮して税金を軽減してくれる制度です。
勤労学生控除の対象となるには以下の3つの要件すべてにあてはまる必要があります。

  1. 給与所得等の勤労による所得があること。
  2. 合計所得金額が75万円以下で、1の勤労による所得以外の所得が10万円以下であること。(給与所得のみの場合は、給与収入が130万円以下であれば、給与所得控除55万円を引くと所得金額は75万円以下になる)
  3. 特定の学校の学生、生徒であること。

 勤労学生控除を利用すると、アルバイトなどの給与収入が年間130万円までは所得税が非課税となります。年間130万円を超えると健康保険上の「被扶養者」から外れ、自ら国民健康保険に加入することになります。また学生であっても所得税の納税義務が生じます。
 扶養には税法上の「扶養親族」と健康保険上の「被扶養者」があると前述しましたが、学生の給与所得が103万円を超えた段階で税法上の「扶養親族」からは外れ、結果、親が負担する税金の額が増加します。一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか、「103万円の壁」という言葉はここからきています。

住民票を移さないことで起きるデメリットは?

 大学生には住民票を移さなくてもいい「例外」があると紹介しましたが、住民票を移さなかった場合に気をつけるべきポイントがいくつかあります。

住民基本台帳法違反で過料が発生する可能性も

 前述のとおり、転入届は転居した日から14日以内に提出することが義務付けられています。
正当な理由がないのに14日以内に転入届を提出しなかった場合、「住民基本台帳法(第六章第五十二条)」により5万円以下の過料(行政上の秩序を維持するために、行政法規上の義務違反に対して少額の金銭を徴収するという罰則)に処されます。

引越し先の選挙の選挙権を得られない

 住民票を移さないと居住地での選挙権が得られません。
 ただし、住民票を移してから3カ月経っていないと新しい住所での投票はできないので注意しましょう。引越しから3カ月を経過しないうちに選挙がおこなわれる場合は旧住所での投票が可能です。
旧住所まで出かけることが難しい場合は不在者投票を活用しましょう。

本人確認書類が届かない

 さまざまな場面で本人確認書類として住民票の写しの提出が求められることがあります。しかし、住民票を移していないと住民票の写しを本人確認書類として使用することができない場合があります。
 例えば、クレジットカードの発行手続きを行う際には本人確認書類として住民票の写しを送付する場合がありますが、住民票に記載された住所と実際に住んでいる所が一致していない場合はカードの受け取りができません。
 また、携帯電話やSIMカードの契約書類は公的証明書の原本に記載された住所に送付することが「携帯電話不正利用防止法」で義務付けられています。そのため携帯電話やSIMカードを申し込む場合は運転免許証や運転経歴証明書、マイナンバーカードなどの画像の提出が求められますが、それらに記載されている住所を現在住んでいる場所にするには住民票を現住所に移すしか方法がありません。

住民票を移した場合、成人式はどこで出る?

 成人式は中学時代や高校時代の友人に再会できる大きなチャンスです。そのため、住民票を移したとしても多くの人は地元の成人式に出席します。成人式の案内状を転居先で受け取る際は送付先変更などの手続きが必要な場合があるので、参加を希望する市区町村へ問い合わせをしてみましょう。
 また、2022年4月より成年年齢が18歳に引き下げになることにともない、成人式の参加基準が自治体によって変更される可能性もあります。こちらについても各市区町村に問い合わせてみることをおすすめします。

住民票を移すための手続き方法は?

 住民票の移し方はとても簡単です。
 まずは引越し前に住んでいた市区町村の役所に行き、転出届を提出します。
 本人確認書類として、運転免許証やマイナンバーカード、国民健康保険証などを持参しましょう。転出届を出すと、役所側から転出証明書が渡されます。
 引越し後は、新しく住む市区町村の役所に行き、転入届と転出証明書を提出します。
 本人確認書類として、運転免許証やマイナンバーカードを持参しましょう。マイナンバーカードの追記欄に住所変更の記載をしてもらうことも忘れないようにしましょう。
 転入届、転出届の提出は郵送でも可能です。ただしこの場合も引越しをしてから14日以内に手続きをする必要があります。
 以前と同じ市町村内で引越しする場合は、同じ役所・役場で手続きをおこなうことができます。 また、以前と同一市内で別区への引越しをする場合は、転入届と「区間異動届」が必要になり、転出届は不要となります。県をまたぐ場合・またがない場合、同一市内の転居などで手続きが変わってくるので気を付けましょう。

住民票を移したあとで必要な手続きは?

 住民票を移した後は、運転免許証をお持ちの場合は運転免許証の住所変更もおこないましょう。運転免許証の他、新住所を確認できる書類として住民票の写しや公共料金領収書などを持参し、住所地を管轄する警察署などで手続きをします。
 また、アルバイトを始めた場合は年末調整で勤労学生控除の欄に住所の記載が必要になります。この際も転居先の住所を記載することになります。

まとめ

 大学生が一人暮らしをはじめる場合、基本的には住民票は移さなければなりません。住民票を移す手続き自体は簡単ですし、移した場合の不利益もありません。しかし、学生の場合は例外として住民票を移さないという選択もありますので、自分がその例外に当てはまるか確認してみましょう。

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